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とりあえず四方を囲うのは真っ白な壁。
とは言ってもそれによって視界が悪くないほどの白さではない。
「さーて、それじゃあ秘密特訓というものを初めて見ようかねぇ」
何処となく弾んだ口調でリオンはそう言う。
「その前に幾つかの質問をしてもよろしいでしょうか」
「よろしい、申してみなさいファイ」
ぶん殴ろうかと思ったのは内緒だ。
「この部屋が特別だって話ですけど、一体何が特別なんです?」
その質問に対して得意げに目尻に皺を作るリオン。
「良くぞ聞いてくれた。実はこの部屋は外の空間と比べて、時間の流れが速いんだよ」
成程、意味が分からない。
「ま、極端な話をしてしまえばこの部屋の中では二時間が経過していたとして外の時間では一時間しか経過していないんだ」
「……それってものすごい危ない事なんじゃないんですか?」
「高々寿命が一日二日縮む程度気にするな」
ファイを除いた三人は、背筋がゾッとするのを感じた。
「そりゃ貴方は別に気にする必要性は無いでしょうが」
溜息を吐くようにファイは呟く。
これだから不死人の発想というものは面倒だ。
「ま、みっちりそれだけ訓練が出来るって事さ。他の連中よりも多くな。ああそうだ、この中の時間は、外部での二時間につき一時間だ。因みに四時間につき一時間にするつもりなので宜しく」
つまり、二倍の時間がこの部屋の中では経過するということか。
つまりそれだけ他人よりも歳をとって行く、という事にもなる。
「ま、文字通り生命を削っての訓練って事さ。頑張ってくれな」
そんなことを言われると、手を抜くことが出来ない。
そうしている間にも自分の時間は早く進んでいっているのだから。
といっても、僅かな時間の中であるため、そこまで大きな時間のずれが発生するわけでもないが。
「さて、質問は……」
「後もう一つ、この部屋には一体何の魔法がかけられているの?」
カレナが質問をする。
確かに気になる所だろう。
「ああ、それね。勿論、時魔法――なんて答えたいけどこれが残念ながら違うんだな。これは光属性の魔法だ」
「光属性の魔法に時間を操るものなんて聞いたことが無いわよ」
「頭を柔らかくしなよ、カレナ嬢。光属性は光を操る魔法じゃないんだぜ? こいつは速さを操る魔法だ」
「……成程ね。ほんと、化け物染みているわね」
「お褒めに預かり光栄ですお嬢様」
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