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恭しく頭を下げるリオン。
そうしてすぐに頭を上げると、声を上げる。
「さて、無駄話はここまで本格的に訓練を始める」
その言葉に四人の表情が引き締まる。
何も無い部屋の中、張り詰めた空気が支配する。
「まずはファイ。お前さんにはそろそろ応用技を教えてやる。キリエの技をな」
それに対して元気良く、ハイと返事をするファイ。母親の技、キリエが使った技を自分も使えるようになるのだ。
緊張と技を受け継ぐという重圧が彼の背にのしかかる。
母親を彼は知らない。ただ、自分を庇って死んだという事は分かっている。
物心つく前に失ってしまった者の力を受け継ぐ、その行為に重圧を自然と感じてしまう。
「そうだな、カレナは水属性の特殊な使い方を覚えてもらうか。お前さんはどうも肉弾戦は不得意みたいだしな」
よく見ている。近接戦闘は実はそこまで得意じゃない。
中距離戦闘に置ける戦闘が得意なのだ。水を鞭のように使用したり、近距離では氷の剣を作りだしての攻撃を行う。
相手に出来るだけ距離を詰めさせない事をそのスタイルとする。
短剣を作ったのは只の近距離における攻撃力と防御力の強化だ。
「ピアナは……口で説明するのが面倒だ、後で教えてやる」
何を教える心算なのか……。
なんとなく肩透かしを食らった気分だ。
それでも不平をもらさずに、彼女は只その場に立っていた。
内心では何をするのか、疑心で満ち溢れていることだろう。
「最後にワルキだが……」
少しだけ躊躇うように、言葉をつなげる。
「俺に一発当てる事、これが訓練だ」
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