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他の三人に比べてあまりに明確だが、あまりに単純で稚拙な内容。
当の本人は不服こそ漏らしてないが、表情が不機嫌そのものだ。
何せファイやカレナは新しい技を教わるみたいだし、ピアナもきっと派手な技を教わるのだろう。
だというのに。
だというのにも関わらず、自分だけここまでも地味な訓練なのだろうか。
疑問と苛々がつのる。
頭を働かせるのは嫌いだ。
「……待って、リオンは一人でしょう? だったらどうやって私達に指示を出すの」
カレナがそう質問をすると、ちょっとだけ固まるリオン。
考えてなかったらしい。
やれやれと溜息を吐くファイ。
「だぁが! 心配するな諸君!」
「最初から心配ばっかりです」
「こちらには優秀な指導員がもう一人居るじゃないか!」
にゃぁん、と鳴き声が聞こえて黒猫が現れる。
最早、彼女が登場する際には必ず現れる効果音となり始めている。
何と言うか、そこはかとなく不気味さを感じさせる辺りが気に入っているもかも知れない。
本当に地味に俗っぽい所がある神様だ。
「でも二人までしか教えられないわよ?」
「誰も付きっきりで指導するなんていってないだろ。俺が担当するのはファイとワルキの二人だ。あとは様子を見る程度。つってもま、ファイだけはほぼ独学でやってもらう事になるけどな」
つまりリオン自身はワルキに付きっ切りで訓練を行うという事。
その気になれば分身だって作れると言うのに、何を考えているのだろうか。
「ま、詳しいことは後々話す事にして、それじゃあ始めようか。地獄の猛特訓って奴」
そうか、そういうことなのか。
ここに来てファイは納得した。納得してしまった。
この人間は普段、飄々として落ちこぼれを演じているが本来はものすっごいサディストだ。
つまり修行の名目でものっそい苛める気なのだろう。
ワルキにはご愁傷様といわざるを得ない。
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