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絶対本気で相手をする。それと同時にこの中で最も実力が劣っているという事も判明する。
リオンがやろうとしているのは全体的な実力の底上げ。
この四人の能力を平均化するとギルドランクはC程度。
予選を勝ち抜くためだけならば、リオンを除いた四人ならば容易に突破可能だろう。
突破を可能にするのは主に、ファイ、カレナ、ピアナの三人の実力だろう。
ワルキは実質論外だ。
確かにあの暴走に似た状態になればファイ程度の実力なら、容易に圧倒する事が出来るだろう。
しかし、だ。試合の度にあんな状態になっていてはワルキ本人の体力も持たないし鬱陶しい。
頭の良い奴なら容易にいなせてしまう。
基礎的な事をやると言う事がそれを証明している。
そんな足りない頭で考える考察などどうでもよく、四人は各個人に別れて行動を開始する。
この真っ白な空間の中にもどうやら個室というものが存在するらしく、互いが互いの邪魔にならないように区切りをつけている様である。
とは言っても完全に遮断された空間、というわけでもなくそれぞれに会話が出来る様な機構になっている。
ちなみに防音機構はあんまりないらしい。
ある程度のコミュニケーションは取れるようにはなっているらしい。
必要かどうかはさておいて。
さて、個室に別れて始めに指導を受けるのは勿論一番弟子のファイである。
「さて、キリエの技を教えるって言ったな。幾つかは知っているだろう」
凍刃や炎刃がキリエの使っていた技の一角だ。とはいっても、そんなものは誰にでも出来るし、やっているものであるが。
「立火、夏至、冬至、百火繚乱、氷華、俺の技は小夜曲、行進曲、円舞曲、組曲、とあるが……」
「ちょっと待ってください。いつの間に貴方の技まで覚えることになっているんですか」
「問題あるか?」
「貴方の技よりも先に母さんの技を覚えるほうが先決です」
「思っていた以上にマザコンだねぇ」
けらけらと笑うリオン。
娘離れできなかった男が何を言うか。
「少しは俺の心情ってもんを理解してください」
眉をしかめてファイはそういう。
「分かった分かった。教えてやるよ。次も待っていることだしな」
リオンはそういうと刀をその手に呼び出した。
「よく見ていろ。これがキリエの技だ」
リオンは抜刀しその白銀を翻す。
そこから迸る業火の美しさに、ファイは只目を奪われるだけだった。
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