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基準時間一時間経過後。
ファイは母親の剣をその身に染み付け、自室のベッドの上に横たわっていた。
鬼火、狐火、夏至、冬至、百火繚乱、赤龍、それ自体は見るだけでシンプルな技の組み合わせ。
だというのに、それをものにするのには時間がかかりすぎる。
繊細な魔力操作、乱れぬ精神。
今まで訓練してきたものとは異なる性質のものばかり。
肉体面での疲労ではなく精神面での疲労が大きい。
こんなものを学生のうちに使うとは……。
自分の母親ながら恐ろしく感じる。
流石は最強といわれただけのことはある。
それに比べて自分は……。
まぁ、遺伝子なんてそこまで関係ないので、自分が普通なのはいいことだ。
あんまり厄介な事に巻き込まれたくも無いが……。
本当に最近気がついた。
実は結構厄介事の渦中にいるということに。
事件なんていつでも起こっているようなものだけど、向こうからやってくるなんてもんじゃない。
ということは持ち込んでくるか、起こす奴が近くにいるという事になる。
訓練終了後のワルキの顔を見れば判る。
ほとほと憔悴しきっていて、見るも無残な姿と成り果てていた。
どうやらこってりと絞られていたのだろう。
たった一発当てるだけ。
それもリオンが相手だと果てしなく途方も無い行為に変わってしまう。
一対一に置いて、すべての攻撃を回避する事が出来るなんて大層な自信だが、本当に出来てしまう辺りがリオンらしいというか。
とはいってもまだ現状では手を抜いている状態だろう。
カレナはいつも通り元気はつらつだったが、反対にピアナが珍しく沈んだ表情をしていたのが気になった。
特段厳しい訓練を受けていたわけではないだろう。
一体何故沈んでいたのか。
疑問は疑問だが、彼女の問題だ。
なるべく放っておくのが得策だろう。
それに、彼女は絶対に問題を抱えない。抱えたとしても自分で解決するし、引き際もわきまえている。
心配する必要性は無いだろう。
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