開幕

7/13
前へ
/617ページ
次へ
それこそ、無理難題だ。 「ピアナ、お前は無理じゃないな?」 含み笑いを浮かべて、リオンは彼女に尋ねる。 自信満々に、首を一つ縦に振る彼女にカレナは驚いた。 ピアナは正直だ。 嘘はつかない。 つまり、それだけの実力があると言うことだが、今までそんな自己顕示を彼女が見せたことはなかった。 いつもカレナの後を付き従って歩いているだけだったのに。 「ワルキも、無理だ、なんて言わせないぞ。そうなるように、お前達を訓練してきたんだからな」 ぐ、と言葉に詰まるワルキ。だが、それでも言い返す。 「あんなのが一体なんの役に立つっていうんだ!」 「お前に不足しているもんがあれで足りるのだよ。バカだからな」 言い返せないが、言い返せはしないが非常に腹の立つ一言だ。 こめかみに青筋を浮かべながら拳を握り締めている。 「ま、そんな所だ」と一人満足げにこれで終わりだと思っているリオン。 だが、そんなことで終わらせないのが、逞しくなったファイたちである。 「……俺達ばっかりそんな課題出されても面白くありませんからね。俺達が見事課題を成功したあかつきには、貴方も試合をしてもらいますからね」 その一言には流石のリオンも硬直した。 「……冗談で言っているんだよね?」 冷や汗を流しながら、リオンはそういう。 一方のファイは大真面目だ。 「いいえ、冗談半分などではありませんのであしからず。因みに負けるという選択肢は無いので」 「そんな約束俺が守るとでも……」 「血祭りにあげられるのとどちらが良いですか?」 「はいすいませんでした」 素直に屈服するしかないリオンであった。 死なないが故に拷問は辛いものになる。しかもそれが孫からのものとなれば、精神的に酷いものになるだろう。 だんだんとこいつもクロノに似てきた、とリオンは隅でいじける。 何と言うか「おじぃちゃーん!」という会話を期待していたのだが、流石にもうそんな年齢ではなくなっている。 もっと早くに顔見せとけばよかった、とこの時ばかりは後悔したリオンであった。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加