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そんな事を言われても、武器が使えない、と言う不利な状況でどうやって戦えと言うのだ。
「……決勝トーナメントまでとっておきたいあれを使えと。そう言うことですかリオン様」
ぼそりと呟くと、ファイはこめかみに青筋を浮かべる。
こんなところで新技を披露する気も無かったのだが、リオンが言ったのはそう言うことなのだろう。
ふと、一度大きく距離をとるとそこで動きを止めるファイ。
刀を握ったまま両腕をだらんと下げているその姿は、相手にはきっと試合を諦めているように映ったのだろう。
何のためらいも無く、相手はファイに向かって突っ込んでくる。
まるで溜息を吐くかの様に、短く深く息を吐くとファイは右手に魔力を集中させた。
そしてそのまま向かってくる剣を防いだ。
ファイの右腕に現れているのは、紅蓮に揺らめく籠手。
魔炎装を部分的に顕現させた状態だ。
当該部位を魔力によって防護するだけでなく、筋力の増強による基本的な攻撃力の向上も図っている。
因みに常に展開された状態である為、非常に燃費が宜しくないのは言うまでもないだろう。
本来は全身を覆う鎧となるのが一般的だが、高校一年生にして部分展開出来るのは非常に稀有な存在と言ってもいい。
全身装甲なんて、高校生が行う代物ではないのは言うまでもない。
どちらも出来るファイはその点、他よりも抜きん出ているというべきだろう。
唐突に現れたその手甲に怯んだその一瞬のうちに、拳を相手の胸部に叩きつける。
その一撃で相手のブローチにヒビが入った。
もう一押し足りない、とファイは舌打ちをすると、次の魔法を発動させた。
「火花」短くそう言うとファイは炎を纏わせた右腕を振る。
すると尾を引いた鋭い閃光が、その手から放たれる。
それはチカチカと輝きながら相手の無防備なブローチへと吸い込まれていった。
完全にブローチが砕け、そこに残ったのは片腕に紅蓮を纏わせたファイ一人だけだった。
「勝者、ファイ・クロノ・デルシオン」
試合終了を告げるブザーとアナウンスが流れてくる。
短く息を吐いたファイは、右腕を軽く振って魔法を消すとそのまま控え室へと戻って行った。
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