訪れる未来の女神

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そこから推測するに、リオンが一体何をしているのか、監視をつけたのだろう。 派手な立ち回りがこれからできなくなった。 尤も、リオンにはそれがただの名目である事に気がついているが。 なんにせよ、ファイに教えることはある程度一学期と夏休みの間に、終わっているのでそれほどの問題は無い。 後は彼の実力が錆び付かない様に、ゆっくりと日々の訓練を行っていけばいいだけ。 可能性を残している年頃なのだが、これ以上は実践を交えての訓練でなければ意味をなさない。 いずれは父にも負けない程の実力を持つことになるのだから。 その素質も備わっている。 本人にやる気があるかないかの違いだけだ。 「どうせ仕事をしていないからでしょうに」 口を尖らせて、ファイはカレナに言う。 「……こいつに仕事なんてあるの?」 猜疑心溢れる瞳で、気の抜け切ったリオンの面を見るカレナ。 他の三人も同様だ。 「おいおい、心外だな。俺だって仕事くらいあるんだぜ」 「でもまともにした事は無いですよね」 「まぁな!」 ふんぞり返って鼻を鳴らす。 その行為がどれだけファイの神経を逆なでするか、分かって行動しているのだろうか。 今にも跳びかかろうとしているファイを、ワルキが必死で羽交い絞めにする。 それに構わず、カレナは次の質問をする。 「で、本当に心当たりはないんでしょうね」 「ないない。仕事しないだけなら、口頭注意だけだし」 けらけらと快活に笑う。 「あんた、犯罪に加担しているんじゃ無いでしょうね」 「俺がそんな事をする奴に見えるか?」 いきなり、真面目な表情に変ってリオンはカレナに尋ね返した。 当然、返ってくる答えは決まっているが。 「見えるわ」 「見えますね」 「見えます」 「見える」 「当り前じゃ無い」 上から順に、カレナ、ファイ、ピアナ、ワルキ、委員長だ。 全員、意見は一致している。 と言うか、こればかりは意見が食い違う事なんてありえない。 確かに、リオンの容姿は素晴らしくいいものだと言える。 確かに言えるのだ。 だが、それ以上にカレナ達からすれば「胡散臭い」と言う印象が強い。 だってそうだろう。 今まで落ちこぼれだと思ってた奴が唐突に、強くなったのだから。 ルシフェルの弟子、と言う身元保証があったとしても、素性を知らない以上、胡散臭い眼で以外、一体どうやって彼を見ればいいのだろうか。
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