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控え室から退出し、それぞれの自室へ引き上げる途中、カレナはピアナに聞いた。
「……ねぇ、ピアナ。リオンと何かあったの?」
その質問にピアナは目もあわせずに答える。
「……特に何も」
「嘘、ね。一体何があったのですか、ピアナ」
「お嬢様には……関係の無いことです」
振り向くことも、足を止める事もなく彼女はただひたすらに感情のこもらないこえでそういう。
本当にリオンとは何も無かった。
別に仲違いをする様なことはなかった。
ただ自分が単純に葛藤を抱えてしまっただけ。
この問題は、誰にも相談することは出来ない。
それが例え、自分の敬愛するお嬢様であったとしてもこの問題だけは。
「ピアナ! お前が何を悩んでいるのか知らないけどな!」
歩く彼女の前に出て、道を阻むように躍り出るワルキ。
「お前は今のお前だ! ただのピアナだ!」
その言葉を聴いたピアニシモ・ニル・イルナイトは悲しげに瞳をまっすぐな少年の瞳を避けるように歩く。
「……そんな風に、割り切れないわよ。私は未だ……」
誰に聞こえる訳でもなく彼女の呟きはただ宙に消えていく。
自分は未だ、貴族として。
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