7442人が本棚に入れています
本棚に追加
控え室で三人はただ唖然としていた。
ピアナのそれとは全く異なる一撃。
ただの力任せの一撃が、相手を沈めた。
「……リオン様。一体どんな訓練をしたらあんなことになるんですか」
「どんなって、んー、普通?」
「普通であんなまでなりますか!」
「なるなーる。ぜったいなーなるであーる」
「笑いながら言うな! というか絶対あなたすごいことやっていたでしょ!」
凄い事も何も、普通に特訓していただけだ。
リオンからすれば特に珍しい事でもなんでもない。ただ一つだけいえるのは、在り得ない程の才能をその身に潜めているということくらいだ。
流石のリオンもあのくらいの時間でここまで成長するとは思っていなかった。
相手が反応出来ない程の瞬発力。
魔力強化無しであれなのだから。
これはとてつもない逸材にめぐり合えた、と内心わくわくが止まらない。
「どうだ、言われたとおり一撃で倒してきたぞ!」
「すごいすごい。流石はワルキ。この俺が一対一で教えたかいがあるってもんだ」
内心は笑いが止まらないのを我慢して微笑みかける。
今まで生きてきたが、これほどの才能を持った人間は初めて会うかもしれない。
何人の人間を殺してきたかはもう忘れた。
ただいえるのは、自分でなければこの男は殺せなくなるかもしれない、というリオンの想像。
実に楽しみじゃないか。
この男があの狼を従える姿が。きっと、誰よりも強く、誰をも守る戦士となりうる素質を持った人間。
願わくば彼が、彼の信念が揺るがないように。
その時彼は、最も恐るべき敵として立ちはだかる事だろう。
最も強大で、最も残酷な。
最初のコメントを投稿しよう!