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ワルキの圧倒的な勝利による衝撃も覚めやらぬまま、カレナの試合が開始する。
彼女に課せられたのは魔法限定の戦闘。
つまり剣と鉄扇を使うなということだ。
無茶ではない。それ相応の訓練は今まで行ってきた。
そもそも彼女の戦術はそちらが主なものだった。
近接武器を使うのはあくまでも自衛のためだ。
使わないのなら、邪魔になる武器は取り出さずに相手と対峙する。
試合開始の合図と同時に魔法を使う。アクアスプレッド、迸る水流が彼女の手から放たれる。
あくまでも見掛け倒しの攻撃だ。
次にアイスニードルで敵にダメージを与える。
思ったとおり、相手は向かってくるアイスニードルに気がつく事無く、直撃してしまい体勢を崩してしまった。
その一瞬の隙をついて、カレナは彼の足元にある水分を凝結。動きを封じる。
足を地面に固着させられた相手は、最早射的の的も同然。
ただカレナは無言で氷で槍を構築し、勢いよく相手の胸元へと突き刺した。
「試合終了」その号令は先程とは打って変わって落ち着いたものだった。
難無く、一度も派手さを見せずに粛々と。彼女は勝利をもぎ取って見せた。
ただの勝利。
だが、それこそがもっとも素晴しいものだということだ。
「いかがかしら、貴方のご希望には添えたかしら?」
少女らしからぬ笑みを浮かべて、彼女はそういった。
「ご希望通り。ご希望以外の何物でもないよ。望んだとおりの結果。望んだとおりの、それ以上もそれ以下もない、完璧な出来栄え」
流石だね、とリオンは言う。
今回の結果は予想以上の出来だった。
別にペナルティを設けたわけではないし、おのおのがルールを遵守する必要性などなかった。
にもかかわらず、それを成し遂げてしまった。
これ以上の結果があるか。
もっともファイには少々冷や汗をかいてしまったが。
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