序曲

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何せ予想に反してかなり危なっかしい戦闘だった。 あの程度の状況ならば簡単に打破してもらわなければ、これから先の戦いに生き残れない。 何とか勝利を物にする事が出来たものの、あのままだったら確実に負けていただろう。 ワルキとは大違いだ。 多分、いや確実に今現在の中で最も弱いのはファイだ。 実力的には、カレナに勝っていると言える。今までそうやって鍛えてきたのだから。 けれど、今のファイはメンバーの中で誰にも勝てないだろう。 ようは覚悟の話だ。 カレナは言わずもがな、ピアナに至っては自分の名前と過去を、ワルキは勝利の為に貪欲となった。 そんな中で、ファイだけが今までと変わらない。 変わらないまま、ここに立っている。 果たしてこれで勝てるのか、何て愚にも及ばない考えを一瞬だけ頭によぎらせる。 思い出した。 今までの戦い全てにおいて、ファイが本気を出して戦ったのは幾度と無い。 自らの命の危険、そして何よりカレナの身を護る為だ。 その為になら、生命を捨てる覚悟も見せた。 死を美徳とされても困るが。 「さて、それじゃお前達の本気を見せてもらったし、次は俺の番か」 帰宅途中にリオンが呟いた。 「そうです。逃げることは許しません」 後ろから孫の言葉が聞こえてくる。 そう、逃げは無い。 けれどその前に。 「俺は二回目だ。一回目はファイ、お前がやれ」 「待ってください。順番から言ったらリオン様が次の順番な訳ですが」 「お前だけ再試」 「ふざけないで下さい」 「ふざけてるんはどっちよ」 「貴方です」 「確信を持っていわんでも」 「確信以外あるわけないでしょう」 「いやいや、こん馬鹿弟子が」 「言われたとおりきちんと勝ちましたよ」 「勝ち方が問題だろ」 「良いじゃないですか勝ったんだから」 「あんなものが勝った内に入るとでも?」
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