序曲

6/19
前へ
/617ページ
次へ
リオンのその言葉に次の台詞が出てこなくなる。 ピアナはあまりに圧倒的な戦術で。ワルキは圧倒的な力で。カレナはただ淡々と。 勝利をもぎ取っていったのに。それと比べたときにファイの勝利はあまりにお粗末で、無様なそれだった。 別にそれでも構いやしないけれども、こんな遊戯だったら、余計に完璧なものにしてみたいじゃないか。 というのがリオンの発想であるが、ファイの発想はそうでない。 お遊びだからこそ、楽しみたいのだ。 こんなお祭りくらい普通に楽しんだって良いじゃないか。何でこんな時に限ってやる気を出しているんだろうかこの馬鹿師匠は。 という気分である。 普段から真面目に頑張っているファイと、普段からガス抜きばかりしているリオン。 当然、こういった祭りごとに関しても感性がまったく真逆になるわけで。 とはいっても、リオン自身はこういったことにも比較的消極的な立場を崩さなかったというのに、どういった心境の変化なのだろうか。 ぜひとも聞いてみたいものだ。 「それじゃあ、明日を楽しみにしてようか。少年少女諸君。楽しい楽しい見世物をみたけりゃ、ファイを勝たせなよ?」 リオンは一人言い残すとその場から姿を歪ませ、消える。 今まで見せたこと無い動作だ。 おそらく、本当にやる気なのだろう。 光と水属性の魔法を使った幻影の魔法に、転移系の魔法を使ったのだろう。 これを見せた、ということは本気……なのかもしれない。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加