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「ひどいやひどいや。みんなして俺の事を胡散臭いだなんて……」
その場にうずくまってそう呟くリオン。
「いや、だって……ねぇ……」
同意を求めるように周囲を見回すカレナ。
「逆に何処をどう見たら、胡散臭くないのか、こちらが聞きたいですわ」
ピアナはそう、酷評する。
目の前でうずくまっている男は、自分の本名から生まれまで知っていた男だ。
胡散臭い、と思うのが普通だ。
名前までかえていたというのに。
当然の意見ばかりが口を出る。
打ちひしがれてどんどんと暗くなっていくリオンの肩に、やさしく手をのせるファイ。
リオンが振り向くとそこには、やさしい笑顔をたたえた孫の姿が。
「ファイ……」
つられて笑顔になりかける彼に、ファイはとどめの一言を突き刺した。
「諦めて下さい」
その一言がどれだけリオンの胸を抉った事だろうか。
その場にうつぶせになって倒れる。
滝のような大粒の涙を流しながら、ぶつぶつと何やら呟いている。
正直に言おう。
気持ち悪い。
正装をした男が、道にうつぶせで倒れこんで、涙を流しながらぶつぶつと何かを呟いている光景……。
気持ち悪いの他にどう形容したらいいのだろうか。
今のリオンにぴったり合う、形容詞と言うのは無いのだろうか。
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