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それは体中を切り刻み、そして消える。全身を襲う痛みの中、ただ唖然と敗北を思い知らされた。
「さぁ、跪け。絶対的な結果の前に」
両膝が地面についたその刹那、ブローチが砕け散る。
彼の体が消えるその瞬間を眺める事無く、ゆっくりとその足を帰路へと向ける。
控え室でその光景を眺めていたワルキは頭をかかえていた。
「……あれを毎度の事繰り返されていた身としては酷く同情をせざるを得ない……」
ポツリと呟く彼の台詞には何処か哀愁が含まれていた。
まぁ、確かにあんなことを繰り返されていたら、否が応でもべったりと机に張り付いてしまう事になる。というか立ち上がっているほうがおかしい。
「因みに立てなくなったら延々と殴る蹴るの暴行を受けていた」
衝撃の事実。本物のサディストだった。
と言うか、あれをクッション材無しで受けたときのダメージなんて想像したくない。
全身をくまなく切りつけられるのだ。きっと一度は気を失うだろう。
それ以前に明らかなオーバーキルだ。
おそらくブローチのキャパシティを越えているに違いない。
「ほれ、言われた通りに勝って来たぞ」
いつもと変わらない表情でリオンが控え室へと戻ってきた。
その頭に拳骨が一つだけ落ちる。
「痛いな!」
「派手な事は止めてくれませんか?」
フォローする身にもなってほしいとぶつくさ文句をいう。
やらなかったらやらなかったでとことん手を抜く癖に、やるとなったらとことん派手にやる人だ。この極端な性格を本当にどうにかして欲しい。
今の一件で間違いなくリオンのことは目をつけられるに違いない。
これ以降の戦術に大きく差し支えるのに。
「別に問題はないさ。予選で出るのはどうせこれが最初で最後なんだからな」
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