序曲

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予選で最初で最後、ということは。 「本戦では本気になるって事ですか」 「ただし面白くない事はしないけどな」 「正体はどうするんです」 「飽きた」 「その一言で俺の今までの苦労はどうなるんですか」 「やーねー、この一瞬のためだけに存在するんじゃない。別に色々と誤魔化す手段はあったわけだしさー」 この喋り方をする時のリオンをぶん殴りたくなってしまう。 どうせあの言い訳を使うつもりなんだろう。 ファイ以外が信じている事実、リオンが崩天のルシフェルの弟子であるという事である。 ルシフェル本人であるという事実は伏せたまま、その力を解放するつもりなのだろうけれど。 それだとファイが面白くない。 何せ今までリオンがそれであることを必死で隠してきたというのに。どれだけ頑張ったと思っているのだ。 あるときは担任にすごまれ、死にかけて殺されかけて。 必死になりながら頑張ったというのに。 「そうですか。ならくたばってくらはい」 「だれがくたばるもんかたこ」 「ならばらばらになって埋まってて下さい」 「退屈だから断る」 「なら宇宙の果てまでふっとんでくらはい」 「途中で帰って来ますた」 「ほんとに行ったんですか馬鹿なんですか」 際限なく続く二人の言い争いに三人は呆れ果ててさっさと自室に戻っていく。 この二人の会話にもいい加減慣れてきたものだ。 ここまで仲が良いと、本当に変な噂が立ってしまいそうだ。 というよりも、立っている現状がある。人の噂も何とやら……なんて言うけれど、時間が経過するに連れてどんどんと話が肥大化している。 どうもファイが敬語でリオンに接する姿が目撃されたらしく、あれやこれやといらない噂まで立っている。
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