序曲

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尤も、当の本人達は知らないらしいが。 相変わらずカレナの不安は拭えないわけだ。 つぎはぎだらけの五人組だが、着々とその実力を付けていく。 それが英雄と呼ばれるそれに、なる事なんてリオンも理解していない事だろう。 そして時間は僅かに遡る。 学校や寮には予選試合をモニタリングできる部屋がある。 一つの部屋に八つのモニタが揃っている為、やることの無い生徒や、相手の偵察を兼ねた暇つぶし、友達の応援など、様々な理由でこの部屋を利用する生徒がいる。 飲食自由なレストルームを使用している為、そういった意味合いで使用する生徒も多々いるが。 なんにしても、予選の試合を全部見ようなんていう生徒はいない。 予選はあくまでも団体戦であり、個人競技だ。 タッグマッチなどではない。 二人を相手にするのと、一人を相手にするのでは話が違う。 シングルマッチなんて戦場ではありえない。 ましてや決闘なんて馬鹿馬鹿しい事をやる、騎士道やら武士道なんて戦場に不必要なものだ。 個人の実力を高めるために戦場に出る人間なんて、よっぽどの事だ。 なら、彼らはどうしてこの学校で武術を学び、人を殺すすべを学ぶのか。 それは無意識なのだろう。誰も気づかないほどに、戦争という二文字が未だに拭いきれていないからなのではないだろうか。 あれから、僅かに十五年しか経過していないのだから。 さて、ここで話を戻そう。 モニタリングルームとして機能している部屋に二人の少女が居た。 二人の眺める画面の中にはリオンの姿が。 「……うそ」 そんな言葉が口から漏れ出した。 発した言葉の主は委員長だ。 あのリオンが勝利したのだ。しかも、相手に触れる事無く。 魔法を使った素振りすら見せていないにも関わらずだ。 彼が最後に見せた表情は、夏休みに一度だけ見たあれにそっくりだった。
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