序曲

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圧倒的な自信とそして全てを見下すかのように冷たい瞳。懺悔するものを平然と突き刺すような、そんな残忍さすら垣間見せる。 「……化物ね」 一緒に見ていたクルドもそんな事を言う。 「最初に挑発したときに魔力を滞空させていたのね。ごく微量の魔力を噴霧するように」 そんな芸当が出来るなんて、化物も良いところよ、と。 恐怖に震えるように、顔をしかめてそういう。 魔力の噴霧。そんな事、誰も考えた事が無かったし、そもそも出来るなんて思えない。 魔法は発動してその効果を発揮する。そもそも、魔力とはその原料に過ぎない。 そんなものを自由自在にコントロール出来る人間はいない。魔法を自由自在にコントロールするのと、魔力をコントロールするのは話がまるで違う。 気体を自由に掴み、その形を変える事が出来るのと同じだ。 「魔力が少ないなんて。馬鹿馬鹿しい。それを補って余りあるほどの技量じゃない。確証は無かったけれど、やっぱりわざとだったのね」 「……何が?」 怖かった。彼女の口から放たれる言葉が。 今までそむけ続けていた事実が現実となってしまう。 「授業に出ない事、ね。彼は面倒だから出ないじゃなくて、本当に出る必要性が無かったのかもしれないわ」 「だったらこんな所に来る必要性が無いじゃん」 「けれど彼はここにいるわ。その理由も分からないまま。私がここに来た名目は彼の監視。確かに、彼の周囲では様々な事件がおきていると言って良いけれど、彼がその主犯ではない」 確かにそうだ。この学校で事件が起きた時にその渦中にはリオンやファイの姿があったにも関わらず、それらはただ巻き込まれた、若しくは首を突っ込んだ、と言ったほうが正しい。 彼らが主犯の事件は今のところ、一学期の新入学早々に起きた一件くらいだろう。 そのときの主犯は崩天のルシフェルだったはず。 だとすれば、彼が一枚かんでいるという事になるのだろうか。 十五年前の戦争の英雄。謎多き、最強のギルドナンバー。 歴史に登場する死神なんていう噂もあれば、その昔子供連れで任務をこなしていただとか、いろんな噂が流れている。 おまけに最近は何処にも姿を見せていないという話だ。 ファイは彼の弟子。もしかしたら何らかの情報が得られるかもしれないが。 まぁ、彼を見る限りは、何か恐ろしい事を何て企んでもないだろう。
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