序曲

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言いながらも余裕の表情を崩さない女性。 「……貴女、何者?」 見知らぬ女子生徒に自分の役職名を言われ、内心は穏やかでない。 それによくよく見てみれば、この女子生徒の制服はよくよく見知ったものだ。 「ふふ、何者に見えるかしら? オラトリオの制服しかなかったけれど。まぁ、貴女には因縁が深いのではありませんこと?」 「……何のことかしら?」 「あらあら、あのくそば……いえ、ウルドの事をお忘れですか? 直属の上司だって言うのに」 「……もしかして貴女ファイと一緒にオラトリオに行っていた女じゃ」 「あらあら、良くご存知で」 「貴女、リオンの同類ね」 「何をもって同類と判断されたのかは分かりませんが、確かに似たもの同士かもしれませんね」 「そう。なら答えてもらうわ。あいつは一体何? 何でここにいるの?」 「その答えを出すのが貴女の任務では?」 「……私に出された命令を知っているのかしら。なら貴女は、いえ貴女も化物、かしら?」 「あら、心外ですわ。こんな美人を捕まえておいて」 「生命の危機にさらされた状態で平然と話が出来る女性を美人と呼ばないわ」 「身近に一人いるじゃない。今を知る女性が」 「あれも化物よ。私に言わせて見ればね。私の攻撃が一切通用しないなんて。でも、リオンの攻撃は通用していた。あいつはは一体なんなの?」 「さて、私も良く知りませんの。何せ別行動が常ですので」 「そうね、確かに別行動が普通らしいわね。何せ獣人の時にはリオンが担当していたらしいし」 「ええ。あの人が思っているよりも首を突っ込んでしまっていたらしいので」 「あの人? 誰の事かしら?」 「あら、これは口が滑ってしまいましたわ」 はっとした風に口を手で覆う女子生徒。その動作の、表情のわざとらしさといったら群を抜いていた。 まさにわざと、といわんばかり。 何が本心か、全く理解できない。
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