序曲

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突如として現れて消え去っていったエルに困惑する二人。 彼女の目的が理解できない。何故現れて、こんな事をしていったのか。 間諜、スパイだとするのなら何かを調べて行ったに違いない。 けれど、何を調べたのか。此方がいったい何をしていたのかを確認しただけなのか? だとして今ここに来る事に何の意味があった? いや、最初から意味なんて無いのかもしれない。 ただ、ここに自分達の状況を確認するためだけに来たのだろう。つまりは眼中になど無い、とでも言いたいのだろうか? いや、だったら訓練中だとかに来るはずだ。 本当にただ話をする為だけに来たのだろう。そして、カレナ達とファイ達のチームが戦う事を望んでいるのだろう。 なぜかは分からない。この二つのチームがぶつかり合うことそのものに意味があるのだろうか。 猜疑。そもそも、エルという女性の存在そのものもリオンと同じように謎が多い。 彼女はリオンと比べた際にはどちらかと言えば、協力的な態度であると言うことには変わりないのだけれども。 うっかり口を滑らせた彼女の言葉。わざと、だと言うのは言うまでも無い事だけれども。もしかして、彼女は挑発している? 自分たちの正体について。 何を企んでいるのだろうか。 たくらみ? 何をする為の? 嫌な悪寒が背筋に走る。 そんな発想は是非ともどこかに消えてしまって、現実に起こらないほうがいい。 正しいんだ。 それこそが正しいのだから。 誰も、悲しまないから。 クルドは苛立ち混じりに吐き出した。 「あんな事なんて、もう嫌よ」
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