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あの時の男性が来ていなかったら、間違いなく死んでいたことだろう。
しかし、あの男は一体誰だったのだろうか。
リオンに聞いてみても、はぐらかしてばかりだし。俺が教えたら殺されるだの何だのと。
面倒くさそうに頭をかいていたのを覚えている。
一体彼は本当に何者なのだろうか。獣人を上回る身体能力。自分が生命を賭してようやく倒した相手を、あんなにも簡単に。
結局正体が誰なのかは未だにきいていない。
誰が正体だろうと余り関係の無い事だ、と。自力でその答えに到達できる、のだろうか。果てしなく疑問だが。
「というか修羅場なんか、もう飽きるくらいくぐって来たけどなぁ」
もう諦めた風に溜息を吐くのはファイだ。彼がそんな風に呟いたところで、幾らかは自分のせいなので誰にも文句を言えないが。
とはいっても、女子高での一件は忘れる事の出来ないものだ。
「……ん? ねぇファイ」
「どうかした、カレナ」
「今、貰ったパンフに書かれてあった来賓の所に貴方のお父様の名前があるけれど」
「あー、普通じゃないか? 多分来てくれるんじゃない? 滅多に公式に出ない人だけど」
「それだけなら良いんだけど、ここに……」
「どしたの……何々、来賓、クロノ・デルシオン……崩天……」
「何だとぉ!」
最後の単語を聞いたリオンがファイの手にあったパンフレットをひったくる。
「な、ん、だって……」
其処に明記されている文字を見て表情を引き攣らせてしまう。
これは一体何の冗談なのか。
「来賓……崩天のルシフェル……だとぉ!」
唐突に突きつけられたとんでもない事実。
まさにリオンにとっては寝耳に水。ふざけるなと言いたい。何せこの開会式に出なければ失格扱い。
一体どうやって同一の時間に同一の人物が存在しろと。
不可能極まりない。
「まぁ、あれです。どうにかなるでしょ」
「ふざけろ! 無理だ!」
「どうにかなるんじゃないんですか」
「無理に決まってるだろ。分身でもしろってか? 結構な距離があるんだぞ。その間をどうやって気づかれずに魔力結合を操作するって言うんだ。ゴーレム作ろうにも色々と問題があるのに。プログラム操作だとしても不自然な行動がある。というか誰だ! こんな事を勝手に許可した馬鹿は!」
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