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そうして順番は崩天のルシフェルへと移るが、その席に誰もいない。
だが、しかし主賓とは遅れて現れるもの、といわんばかりに悠々とした足取りでフードを被った男性が現れてくる。
その傍らには小さなお姫様が。
何を企んでいるのやらそして正体は何者なのか。
「これは失礼。所用で些か送れて参った」
仰々しい台詞が余り似合わない。
というか傍らにいるのはどう見てもジェンだ。
「彼女を迎えに行っていたのでね。ご紹介しましょう、彼女は隣国、アルカリエの王女、ジェリアさんです」
黒服に身を包んだ男性の紹介を受けて、彼女は一歩前に出て一礼する。
獣人であるという最大の特徴である、耳と尻尾を隠す事無く、堂々とさらしたまま迷いの無い瞳で彼女は言う。
「本日はお招きいただき誠にありがとうございます。つい先日まで、我がアルカリエでは内戦が続いておりました。ですが己が欲求を満たさんとする逆賊は、彼、崩天のルシフェル殿とその仲間達によって討たれました。学徒でありながら助力を頂いた方に今、この場でもう一度お礼を申し上げたいと思います」
淀む事無くすらすらと言葉が口から出てくる。これがあの幼い、怯えた幼い子供だったのだろうか、とすら思えてくるほどに。
思わぬサプライズゲストに唖然とするワルキ、ファイ、ピアナ、カレナの四人。
流石にここに彼――彼女が来るとは思わなかったのだろう。
ジェンは言葉を一度だけ切ると、そのまま大きく息を吸い込んだ。
「ワルキさぁあああん! ありがとうございましたぁぁぁぁぁああ!」
はしたなく大声を上げて、手をぶんぶんとワルキに向かって振るジェン。
その姿はまるで、そう、まるで恋をする少女のそれに似ていた。
唐突な事にワルキは呆然としてしまう。でも、悪い気はしない。
「良かったなぁ、おい」
ニヤニヤとしながらファイはワルキの肩をたたく。
「う、うるせいやい!」
顔を赤くしながら、ワルキは高いところにいる彼女の笑顔を眺めていた。
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