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「ああ、其処まで驚かなくて結構。誰かの悪戯でしょうしね。さしずめ、私が何者かを確かめようとしたのでしょう」
彼は言いながらリオンのほうを見てきた。
気づいている。魔力で停滞させて、方角をわざわざ変えてからの攻撃だったにも関わらず。
何者だ。あの二人組は。
崩天を知る面々は現れた女性の事をエルだと思っているだろうが、生憎と一人二役をやっている以上あんな事はありえない。
女連れで実力がある。
なんてそんな奴はそう多くないはずなのだが。
「しかし、これは私に対しての挑戦状と受け取っても宜しいのかな?」
フードの下で唇が歪んだ気がした。これはやばい。
直感がそれを告げる。
「では、こうしましょう。この大会で優勝したチームに、この私に挑戦する権利を差し上げます」
ふざけろこの糞ニセモノ野郎が!
魔力をしっかり練り上げて今度は絶対外さないように狙ってやる所だが、必死になってファイが抑えているため何とかそれが放たれる事は無かった。
不幸中の幸いと言ったところだろう。
というよりも、その光景を見て楽しんでる風にも見える。
リオンの正体にも気がついている上にファイの存在まで知っているとなると、本当に数が限られるわけであるが。
思いがけないイベントに生徒達は沸きあがる。
まさかあの崩天のルシフェルと模擬戦が出来るなんて。そもそも、普段からお眼にかかる機会すらないというのに。
こんなことを考えるなんてどんな心変わりだ、なんていう疑心が彼らに一辺倒でもあればよかったのだろうが。
目先の華やかさに気を取られてしまっているようではまだまだだ。
「待ってください。貴方はそれで宜しいのですか?」
一人だけ言葉をかける人間が現れた。我らがファイの父、クロノ・デルシオンだ。
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