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「良い、というのは?」
「貴方らしくも無く、少々戯れが過ぎると思うのですが」
「あれは十五年前に終わったんだ。もう終わった事なんだ」
「まさか貴方がそんな言葉を吐くとはね。まるで……」
「まるで、友人のようだと。言いたいのかな?」
「ええ、貴方は貴方らしくない」
「けれど、私は私である。だからこそ彼らに今を見続けて欲しい」
「貴方は一体何を考えているのです? 堕天使」
正体を見抜いているからこその言葉。
絶対に崩天とは呼ばない。
「別に何も? 崩天はこの『国に』執着している訳じゃないからね」
成程納得だ。だが、ここで彼の口から出されるべき言葉ではない。
それは正しい。リオンはこの国に執着しているという事ではない。
カレナたちの中で疑問が生まれる。だとすれば、どうして十五年前にこの国を守ったのだろうか。
なんて、きっと事実を知るものしか分からないのだろう。
過去に起こりえた事実、始まりの旋律を。
「それに、ちょっとは彼が困っている所を楽しみたいと思わないか? 君も」
ああ、そういう事か。しきりに頷いて納得してしまうファイ。
つまりはただ単にリオンが困っている所が見てみたいのだ。完全だったからこそ。
「ま、たしかにそうですな」
本音が分かった途端に口端を吊り上げながらリオンを見る。
成程、それが目的の半分か。
なら良いじゃないか。
乗ってやろう。その思惑。何せ此方には未だ未だ隠し玉が残っているのだから。
その後はさしたるトラブルも無く、式はつつがなく進行する。
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