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尤も、彼らは重要な事を忘れている。獅子がその獲物を捉える時、全力を尽くすという事を。如何程に小さな生命でも、生きているという事を。
それを彼らが実感するのはほんの先の話。
それから二日ほどの時間が経過した。
もう既に残暑の厳しさも無くなり、冬の訪れを感じる枯葉舞う季節。
ひと月程もかかった予選がまるで僅かの間の時間であるかのようだ。
そして彼らは今この一つの大きな舞台に立っている。
控え室で待つ時間がいつもよりも長い。
その間に外では簡易的なルール説明が行われている。
箇条書きにしておさらいしておこう。何、簡単なことだ。
一つ、各チームよりリーダーを一名選出。又リーダーは必ず全ての試合に出場しなくてはならない。
二つ、リーダーが戦闘不能に陥った場合、そのチームは敗北となる。
三つ、出場選手及び、バトルフィールドは毎回無作為に選択される。これに対しての否定権は何人も持たない。
四つ、試合時間は五十分。延長戦は同時脱落、及び限界時間時での残人数が同じである場合のみ発生する。
五つ、人員に欠落者が出たとしても、試合は続行可能であるが補給は出来ない。
これくらいか。大体は当たり前のようなルールばかり。
シンプルだからこそ分かるその臨場感。
酷く緊迫した生死の境界を味わう事が出来る。
「さって一回戦もとうとう第三試合まで入ってきました! この辺ではまだまだ大番狂わせなんていうチームは少ないですね!」
会場は既に生徒達が座っている。外部の人間が観戦しているのはごく僅かだ。
この時点ではまだわずかな人間しか席についていない。まだまだ序盤だ。
いるのは家族や掘り出し物を探しているスカウトマンくらいだ。
尤も一回戦で見れる人間なんて高々知れているが。
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