行進曲

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「そして最後のリオン・ヒルタレンですが……は? いや、学業においての実力は最低クラス。魔力等実践的能力は非常に低く、落ちこぼれと呼ばれている学生……って」 彼が読み上げたのは広報部によって集められた情報まま。 確かに一般的なリオンの印象はその通りのものである事に違いないが。 なんにしても酷い言われようである。 「何故、彼がこんな優秀な集団の、しかもリーダーとしているのでしょうか」 彼の疑問は尤もだ。そしてその疑問に対して担任が答えた。 「一般的な戦術からすれば間違いでもあり正しい。最弱である彼を拠点と見立て、それを守護するように陣形を立てる。それに、彼には奥の手がある」 「奥の手? と言いますと。なにやら必殺技でも?」 「分からんが、あいつは私の攻撃を凌ぎきったからな。幾ら手加減していたと言ってもだ。それに一度だけ試合に出て勝利を収めてる。何か隠し玉を持っていると見て間違いないだろう」 彼女の言葉にくつくつと笑うリオン。 たった一人だけ何の気負いもなく、普段と変わらない、いや、普段よりも不気味な雰囲気を醸している。 あまりに目立つ事だった。 「流石はセレナ・リコ。ギルドランクは当てになら無いことの証明だな」 「リオン様。貴方少し空気を読んで下さい」 拳を握りしめながら、ファイはそう言う。 ここまで来ても彼のマイペースさに、翻弄されていては試合よりも先に参ってしまう。 「なにやら、言い争いが始まりましたが、試合開始の時間となりました」 なにやら、溜め息に似た台詞が聞こえて来たが、気にしている暇も無い。 眼前に見えている敵。ただそれだけを、見据えて。 「さぁ! 試合開始です!」 無意味に豪快なドラムっぽい何かの音を合図に、四人は敵に突撃する。 四人はそれぞれの持つ最速の技で相手との距離を詰め、すぐに決着をつけようとする。 だが、まるでそれを見越していたように、相手の姿が消えた。
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