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驚愕するのも束の間に、四人の周囲を取り囲む土の檻。
そしてリオンの周囲には今まで其処にいたはずの相手チーム。
五人全員がリオンに向かっていた。
簡単な作戦だった。リオンの経歴を考えれば、相手がリオンを危険に晒す前に全力で向かってくるのは分かっていた。
だからといって、それを馬鹿正直に迎撃するわけが無い。
開始直後に足元にトラップを仕掛け、別の一人が幻をつくり、もう一人が全員の姿を覆い隠して移動をする。
これで只の移動拠点は門を開いて待っている状態。
たとえリオンがどんな奥の手を持っていようとも確実に仕留められる筈だった。
「……まったく。出鼻からこれか」
リオンは地面に足を叩きつける。同時に煙が巻き上がりリオンの姿を覆い隠す。
所詮はただのめくらましだろうと、相手は全員臆する事無く、霧の中へ突っ込む。
ここまでが完璧だったというのに、なんとも浅はかな事だ。
それが詰めの甘さなのだろうが。
静寂に包まれる会場。
試合終了の音声は流れていない。
ファイが固唾を呑んで見守る中、足音が響き渡ってきた。
其処に立っていたのはリオンだった。
明らかに表情は不機嫌そのもの。
「これが、お前達の甘さだ。まったく、俺が一々本気を出すなんて」
吐き捨てるようにそういうと、リオンは右肩だけに翼を作り出す。
鬱陶しい霧を払うように、彼は翼を羽ばたかせた。
一陣の風が舞い起こり、霧が払われる。
彼の背後にあったそれに、会場がどよめき立ち、実況が絶句する。
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