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頭を抑えてもだえ苦しんでいるリオンの腹部を踏みにじりながら、ファイは言う。
ゴフゥ、と口から空気があふれ出してきていた。
「ネェ、貴方って人はどうしていつもそうなんですか。そろそろ俺も本気で切れますよ? いい加減にしてくださいねまっっったく!」
最後にもう一度蹴り飛ばしてやる。
再びリオンの体が転がって今度は動かなくなった。
その光景を見た会場はざわつき始める。その内容は十人十色。
リオンのいった言葉について、それが真実だと仮定しての裏づけを外部に申し入れる者。
その言葉の真意について語るもの。見せた魔法が一体なんだったのかを語るもの。
そして最後にリオンの安否についてである。
「さ、戻ろうか」
少しすっきりした表情のファイが唖然としている三人に向かって言った。
その表情は全く持って自分が悪いことをしたわけじゃない、と言うのがひしひしと伝わってくる。
……実際に悪い事、では無いのだが。
「……あれ、放ってていいのかよ」
「いーのいーの。気にしないの。どうせ生きてるんだから」
死なないし、と心の中で付け足しておく。
死ぬようならあのブローチが勝手に砕けてなくなってしまうだろう。
なら、未だにここにいるリオンは無傷である、と言うことの証明ではないか。
流石に若干気が引けたが、三人ともファイの後をくっついて控え室に戻っていく。
その後リオンの死骸は風に流される砂のように、さらさらと流れて消えていった。
本当に最近のお気に入りの消え方だ。
「まったく、あの人は!」
「でもま、助かったのは事実ね」
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