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堂々とその道を闊歩するリオンに、溜息を吐きながら続くファイ。
そんな彼を慰めながら、隣を歩くカレナ。その彼女の背中を護りながら歩くピアナ。
そんな彼らを眺めるワルキの表情には何処か影が落ちていた。
「そういえば委員長のチームの試合、どうなっているか分かりますか?」
ふと思い出した風に尋ねてみる。ファイにとっても、彼女達の試合は注目するべきものがある。
彼女達のチームにも規格外が一人だけ混ざっている。スクルド、という規格外が。
目下彼女達がリオンたちの最大のライバル、という事になる。
リオンに匹敵しかねない実力をもつ彼女と戦ったときに、一体どんな対抗策があるのかを考えなくてはならない。
「あいつらか。次くらいの試合だったはずだが。見るのか?」
「ええ、何せ相手はギルドSクラスですからね。少しは対抗策を見出しておかないと」
「そんなんだから足下をすくわれるんだっての」
溜息を吐きながらリオンは言う。
今回の敗因を分かってない辺りがまたなんとも言いようが無い。
本人は理解したつもりでいるんだろうが。とはいってもリオンも興味がある。
わざわざ自分がたきつけてきたのだ。
相手の出方を見るに越した事は無い。さて、あれが吉と出るか凶と出るか。
退屈な時間と連中の実力を見極めなければ。ウルドに暗に頼まれている事もやらなくてはならない。
後進は何人も要らないけれど、何人もいなければ抑止力にならない。
それぞれが、それぞれに対しての抑止力になるようにしなくては。
突出して出来の良い生徒が一人、いる以上急がなくてはならない。
そいつは今、一番危険なのだから。
リオンにしては珍しい程の焦りを持っている。こればかりは、経験が少ない以上仕方の無い一面であるが。
ともかく面倒くさい。
全てを投げ出しても良いが、それをしても後が面倒だ。見捨てきれない。
厄介な性分になったものだと自嘲する。
――――――
「ねぇ、クルド」
「何かしら」
控え室で委員長はクルドに声をかけた。
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