行進曲

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その瞳はモニタに釘付け。もう無くなった先程の映像が、まだそこにあるかのようだ。 巨大な氷。墜ちる人。そして高らかに勝ち誇るリオンの姿。その背にある片翼の翼。 輝いて見えた。なぜかは分からないが、全てが納得した。 むしろ、何故その答えに行き着かなかったのか、疑問にすら思ってしまう。 何故だろうか、ときめきに似た感情を持っている自分がいる。 「貴女は知ってたの?」 「何を、かしら」 「あいつが、あの人の弟子だって事」 「知らない、といったら嘘つきなんていうかしら?」 「……言いたくなるわ、だって貴女はあの時一緒だったから」 「そう。でも、私は知らないし、分からなかった。なんとなく、疑問には思っていたけれど」 「疑問?」 「彼の言動は、何処と無く彼に似た所があったから」 似ていた、あの物怖じしない態度。自分の実力を隠している風。相手の実力を試すかの様に、悪戯をする。 無くて七癖。それは誰にでもどんな生き物でもある。 「でも、納得した。リオンが彼と行動を長く共にしていた、というのなら」 「でも、あの実力は」 「おかしいわね」 「一体何年前から彼と一緒に居たのかしら」 少なくとも、私が彼に出会ったときはいなかった筈だ、と。 暗殺が得意だといっていた。 そういう事なのだろうか。いつもリオンは隠れていたのだろうか。 「戦災孤児、なのかもね」 私と同じ、と口には出さなかったが、言葉をつなげた。 わざわざ彼女達に自分のことを教える気は無い。 「十五年前に一体何が、あったのか覚えている?」 「忌々しい程、鮮明に」 「教えて、もらえないかしら」 「良いけれど、条件があるわ」 彼女は控え室にいるメンバーを見て言う。いつもの無表情を顔に貼り付けて。 「貴方達は手を、出さないで」
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