行進曲

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そして彼女は無造作に剣を縦に振る。轟々と音を立てる、炎が揺らめいた。 地表に入る亀裂。底から噴き出す溶岩。 ゆっくりと足を進めるクルド。彼女が一歩進むごとに、炎が噴き出す。 地面が熔けているかのようだ。 幾ら派手でも、たかが一年生。隙は幾らでもあるはず、と一人が水魔法を放った。 無論であるが、それはクルドに当たるよりも早く、蒸発して消えた。 白煙も見えずに消滅するそれに焦ったのか、幾つもの魔法を連続してクルドに放つものの、一切の攻撃が彼女に届かない。 その歩みを止める事が、出来ない。 「あーあ。こりゃ終わったねー」 リオンは手すりに頬杖をつきながらそういった。 「あれは生半可な魔法じゃ通用しないな。それに生身でも危険だ。普通なら焼け死ぬ」 「一体何なんですあれ」 「ファイアストリームだよ」 「は?」名前だけ聞くと派手な攻撃魔法のように聞こえるが。 見ている限りではどうも攻撃に使う魔法で無いらしい。 「ファイアストリーム現象。火災旋風とも言うけどな。この現象を故意に起こせるのは高度なコントロール技術を使える人間だ」 「でも、見た目は地味ですし、どんな効果があるのかもはっきりとしないじゃないですか」 「お前はもう少し自然災害とか、色々勉強するべきだな。というか前々から言っているだろ。魔法なんて小学生の理科の延長線みたいなもんだって」 溜息を吐きながらリオンはそういう。 目の前で起きている現象についての説明なんて簡単に出来る。 というか、知らなければならないことだ。同じ炎を扱うものとして。 「今は大人しく見てろ。後で説明と実演をしてみせる」 試合はもう終わろうとしていた。 一人を射程距離まで捕らえると、剣を無造作に振った。 零れる火の粉と、その斬撃を受けた生徒の体に残る一筋の赤い線。そこから漏れ出す炎。 何が起きたのかも理解できないまま、相手の生徒は絶命――もとい、退場する。 得物ごと、だった。 それは防御という言葉など無かったかの様にすら感じられるほどに、無意味だ。 必死にクルドの射程から逃れようとする。が、今度は熱線がその体を貫いた。 二人。まだ、二人だ。
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