行進曲

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ズタボロになった会場。その光景がたった一人の少女によって作りだされたものだというのは、余りに信じがたい話である。 だがこれは歴然たる事実なのだ。 まだ二つ。二つの試合が終わっただけだ。 余りに衝撃的な出来事が多すぎる。 明らかに学生のレベルを突破したそれが、目の前で繰り広げられたのだから。 それは殺し合い。ただの一方的な暴力、殺戮だ。 目の当たりにした、本物の空気。 混じり気の無い本物の殺気、殺意、闘気。 それがどれほど彼らに対して恐怖を抱かされるのか、想像だにできない。 何せ彼らは遊びだったのだ。 遊びであるからこそ、残酷な人間もいるのだろうが、彼女達は本気だ。 本当の殺し合いをしている。 良い戦いを、では無い。 生き残る事が、勝利なのだ。 「今年の一年生は、豊作、なんてものじゃないわね」 立て続けに目の当たりにした脅威の実力に彼女も言葉が無いのだろう。 真実の力を目の当たりにした以上は、仕方の無い反応だろう。 普通、この年代であれほどの力を保持しているなんて稀有だ。 普通、どれほど強かったとしても一瞬で数人の人間を氷漬けにしたり、全てを焼き尽したりは出来ないだろう。 「どうした? びびったか?」 口端を吊り上げながらリオンは後ろを歩く四人に尋ねた。 目の当たりにした圧倒的な実力。 ファイアストリームと呼ばれているそれを攻略しない限り、彼女に勝てないだろう。 「彼女のあれは一体何なんですか」 「ファイアストリーム。強力な炎を周囲に起こし、それによる上昇気流で防御する魔法だ」 「それだけだったら、大した問題じゃないのではありませんか?」 「見なかっただろ。岩が溶けたのを」 「もしかして風が超高熱を持っている、とか?」 「当たり前だ。炎による上昇気流が発生するんだぞ。それも複数の強力な炎によってだ」 「それって下手すら自分も丸焦げなのでは?」 「だから、細やかな魔力調整、移動すればその分だけ炎の面積を増やさなければならない」 面倒な相手だよ。烈火の未来は。 なんておちゃらけた笑いを浮かべながら歩くリオン。 (もっとも、他にも面白いのはいるけどな) 内心ニヤニヤしながら、この大会の行く末を眺めようとも思うが。 「遊ばせて貰う。こいつらでな」 ジョーカー、その一枚が余りに不気味に目に映った。
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