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眠たそうな眼で、黒板を眺めながら苦笑するリオン。
「お前も魔法を使えばいいじゃないか」
「何時間維持しないといけないと思っているんですか。そんな魔力ありませんよ」
それでなくても実技とかで、魔力が削られるのに、と口をとがらせる。
「なら諦めろ。諦めて耐え抜け」
「この暑さを耐え抜く事に一体何の意味があるんですか……」
口を尖らせてファイは、机にうなだれる。
「……まさかこの学校に来た奴からそんな言葉が聞けるとは思わなかったぞ」
嘆息を吐いて、そう呟く。
戦場に出れば、暑いだ寒いだ言ってられないというのに。
「根性が足りないらしいな。今日は覚悟しておけ」
嘆息を吐いた後のリオンの一言に、ファイは口は災いのもとである、と言う事を嫌と言うほどに思い知らされた。
折角、最近は特段厳しい訓練も無くなってきたというのに。
「そんな殺生な……」
「この程度で泣きごとほざく、そのへたれた精神を叩き直してやる」
「勘弁してくださいよ……この暑い中実技が待っているというのに」
呻くように呟くファイ。
そう、座学の次は実技が待っている。
結果的には理論である魔法では、座学で学ぶ事も多いだろうが、剣での斬り合い、拳での殴り合いは座学では学ぶ事が出来ない。
敵が右の拳を使って来たから左の拳を使いなさい、なんて言われてもよく分からない。
それの理由について、だとかそんな事はどうだっていい。
それは体で覚える事なのだ。
人によっては、魔法と同じように理論から入るが、結果的にはやはり感覚だ。
だからこうなるんだ、と言う事を全身をもって体感する。
それが大切なのだ。
「授業は授業。訓練は訓練」
涼しい顔で言い捨てるリオン。
「なんですか、その理論は。矛盾だらけじゃ無いですか」
ジト眼でリオンを睨みつけながらファイは呟く。
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