円舞曲

5/21
前へ
/617ページ
次へ
彼は苦笑しながらそう言った。 ゲームは楽しむもの。だからこそ彼は小手調べと言う言葉を使った。 「そうだろう? ヘイトくぅん?」 ティンではなく、その奥に居る筈の名前を呼んだ。 その途端に表情が変わる。相手にするなと指示があったのか。 「貴様は俺の力の中身を知りたがったんだろ? ゲームを行う上において、必要な情報だからな。普通ならこいつに知らせるなんてふざけた事すると思うか?」 嘲笑いながらリオンは剣を玩ぶ。 「こいつはゲームだ。俺も僅かばかりに本気を出したんだ。どうだい? ここらで君も本気ってもんを出したらどうなんだ」 ギルドランク史上最年少特Sランク取得者さん? それを言った途端、相手の表情が変わった。 突如して響き渡る爆音。ティンが大地を蹴った音だ。 間違いなくそれはリオンの喉元を捉えたものだが、何事も無いかのように避けていた。 ティンの表情に油断も焦りも消えていた。 ただ目の前にある敵を倒す、獣の瞳をしていた。 「何処で知ったか知らねえが、覚悟をしてもらおう」 「君は実に馬鹿だなぁ。あの人の一番弟子をやってるのに、知らない訳がないだろ」 剣を片手に距離を取る。 ティンの武装は戦斧、ハルバードと呼称されるものようだ。 その先端は鋭く尖っている。 その重量故に軽々と取り扱うことが難しい筈のそれを使って、あれほどの速さだ。 名前の割りに実力はあるらしい。 リオンの握るスペードの2では不利だと思われる。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加