円舞曲

6/21
前へ
/617ページ
次へ
最弱のカードを使って、戦える相手と判断されたのが余程屈辱なのだろう。 ティンは巨大なそれを振り回しながら、リオンに攻撃を仕掛ける。 その際に周囲の木々を薙ぎ倒して行くが、細かいことは気にしない。 「力任せの戦闘だねぇ。力で相手を圧倒して、そのまま押し潰す。若しくは敵を撹乱するのが本来の役割かな?」 的確に彼に与えられた役割を口に出すリオン。 戦闘中であるにも関わらず、口を開いて言葉を出すことが出来る彼にまた驚いた。 剣一本であしらわれていることにも驚きだが。 「自分が行くまで足止めしておけ」 インカムから聞こえてきた台詞に少し違和感を覚えたが、彼が来る前に終わらせることが出来たら良い。 少しでも彼の負担を減らさなくては。 この大会で負ける訳にはいかないのだから。 「何を焦る必要があるんだろーな」 不意に聞こえてきた言葉に切っ先がさ迷う。 その隙をリオンは逃さなかった。 力に逆らわず、その力を使用者に扱うことが困難な程に増加させる。 それによって地面にぶつかるバルディッシュ。深くまでめり込んでしまい、引っ張り出すのは困難だ。 駄目押し、と言わんばかりに更に力を入れて柄を踏みつける。 「面白くないな。慌てる理由がわからない。あいつは、何かを求めて戦う人間じゃない」 そう言うと、リオンはティンの横っ面を蹴り飛ばす。その勢いで、バルディッシュを放して、地面を転がった。 「あいつがこの学園に通う、と言うのは至極当然なのかもしれないが、もし正体を隠すとするなら、武力なんて必要ない、只の学園であるべきだった。ここは俺みたいな道楽者が楽しみに来るところだからな」 さて、それじゃあ終わりにしよう。リオンはそう言うとゆっくりと立ち上がれないティンへと歩いていく。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加