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「……ファイ。俺はあいつに教わったことがひとつある」
戦闘の最中にワルキは声を発した。
正直、真っ青だ。
「どれだけよけんのが巧くてもだ。すべて破壊する」
目つきが完全に変わった。
イっている目だ。
やばい。そうファイが感じた次の瞬間。
ドゴォォォォォォォン。
そんな擬音が目に映るようだった。
ワルキが地面を殴りつけたその衝撃は状況を一変させるに相応しい。
「……ふざけているわね」
「……同意するよ」
頬を引き攣らせて、女子生徒の言葉に同意する。
最初からワルキに『温存』なんて言葉はなかった。
ただ、相手を殴り倒す。
トンファを構えている彼の頭の中にはそれしかないのだろう。
参ったねこりゃ、とファイがため息を吐くと彼も本気を出した。
先程の程度では、本気でも何でもなかったのだ。
上級生、特にこういった熟練者を相手にするとなると、温存は不要だ。
息を短く吸い、力をためる。
そして溜めた力を発する、その前に爆音が響き渡った。
「ええ~……」
脱力。
ゆるゆると力が抜けていく。
すべてをなぎ倒しながら、何かがファイたちのほうへと近づいていった。
「冗談!」
一目散に四散する三人。
ぶつかり合う刃が、一瞬だけ見えた。
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