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「派手にやらかしちゃってまぁ……」
溜め息を吐きながら呟く。何とか被害を被らない位置に陣取って、嵐が過ぎ去るのを待つ。
何があってこうなったのやら。
注目を浴びることだけは避けたいのだけれど。
もうそんな事は言っていられない。
取り敢えず観察しておけばいいや。
大将戦だし。
「りりかるまじかるもーどーにでもなーれー」
なんて奇跡の言葉を口にする。
「こらぁ! 投げやりなこと言ってないでさっさとこっちを手伝え!」
一体どんな耳の構造をしているのやら。
あの轟音の中、更には激しい戦闘の最中にファイの声が聞こえるなんて。
もう驚きの表情すら見せる事無く、ファイはしれっという。
「ふざけないで下さい。サシの決闘でしょ。手を出すわけ無いでしょ」
「だッ、てめっ! 兄弟子が苦戦しているのに助けないってのはどういうことだ!」
「しったこっちゃありゃしません。貴方も本気出す何て言っておいて苦戦するとはどういう事ですか。あれですか、最近流行りの明日から本気出すって奴ですか」
「十分本気だっての!」
「嘘でしょ~。だって自分とくっだらない会話が出来ているじゃないですか」
もう投げやりになってしまっているファイ。
こんな会話が繰り返されている間にも戦闘は激化していく一方。
確かにこれではファイがあきれるのも納得だ。
「余所見してる場合か?」
ファイとの会話で注意が逸れていたリオンに、剣が振り下ろされる。
袈裟がけに斬られて、そこからは真っ赤な鮮血か飛び散る――筈だった。
真っ二つのままその姿が霞と消える。
それに驚く間もなく、ヘイトは背後からの攻撃を防御。
僅かに動きが止まる二人。
「幻想即興曲」
「知ってたのね。見せたことあったっけ?」
「知っていた、と言う形容が正しいな」
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