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驚いた。幻想即興曲を知っている人間がこの学校の中にいるとは。
勿論の事、クルドは知っていただろうけど。
幻想即興曲を名乗る辺りは大概それが終わった後。
攻撃が終わった直後、つまりは相手が立っていない状況が多い。
そんな中で知っているとなると、相当の実力者かその隣で見たものに限られる。
「ふざけた奴だ」
リオンが呟く。
少し、余裕がなくなっている気がする。
「ふざけているのはどっちだ」
「厳しいね。これでも、君よりはふざけてないつもりだけれど?」
「どこがだ!」
「本名のままでこの学校に通っている上、複数名の生徒、及び教職員にその正体が知られていると言うことだ」
「なら君はどうなんだ。あんな大勢の前で正体を公言して」
「正体? 甘く見てもらっちゃ困る。俺という存在を構築するペルソナが一枚だけだとでも?」
「君は嘘つきなのか」
「そうさね。俺はヒトだからな。生憎だが、知性を持つものは大方嘘と疑心を好んでいるよ」
「なら君の正体は……!」
「生憎と極秘事項でね。全てを晒しだすと殺されちまうのさ」
「一体誰にだ」
「怖い怖いでも愛しくて堪らない、孫に、だよ」
くつくつと喉を鳴らす。
理解など到底出来ないヘイトは言葉が出ないまま剣を振るう。
とうとう、精神でも病んだのかとでも思っているのだろう。
ファイからしたら、既に老衰が始まっているようなものだけれど。
「なんだよそのその目は」
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