円舞曲

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――――――――――――――― 「あー危なかった」 ケロッとした顔でリオンは言う。 控え室に戻って、支給されているスポーツ飲料を飲みながらそんな事を言うけれど、他の四人は愕然としていた。 あの直後、何が起きたのか理解できなかった。 名前の意味を、ヘイトが尋ねた後の事だ。 きっと頭では理解しているのだろうけれど。 感情がそれを理解するのを拒んでいた。 目で追える程度の速度。しかしながら、その一撃一撃は地面を、空気を振動させるほど。 近くにあった木々はその葉を散らしていき、受け止めた地面は抉り取られる。 般若の表情で剣を振るいリオンを追い込んで行った。 轟々と燃え上がる憎しみの焔。 それは、周囲の総てを飲み込む竜巻となり、何もかもを破壊しつくしていく。 そう、元来彼が得意としていたのは、一対一(サシ)での戦術等では無い。 その溢れる力の儘、迸る感情の儘に破壊の限りを尽くす、広域的な戦闘だ。 味方が居ては成り立たない、味方の被害を考えては使えない。 だから今まで力をセーブした上に手加減をしている状態となっていたのだ。 きっと彼らも初めてヘイトの本気を見た事だろう。 今まで本気だと思っていたものが、全く異なっていたのだから更に驚いているだろう。 きっと、どうして今まで本気を出さなかったのか、問い質されているに違いない。 尤もその原因は問い質している本人にある以上、自らの無力を嘆いているのでは無いのだろうか? どうでも良いけれど。
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