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「おいおい、声を荒らげてぇ。今更そんな答えは分かっているだろう?」
あらわれたのは勝利者だった。
「僕を、笑いに来たのか?」
「もちろん。敗者に傷を塗りこむのはたのしーってねぇ」
リオンはケタケタと愉快そうに笑いながら、そういう。
「ちなみに、さっきの答えだが、お前が全力を出しても平気なほどに、実力をつければいいだけの話だ」
「無茶な!」
「それか、お前が力を収束することが出来ればいいだけだろ?」
「……今更、そんな事が」
そんな事、出来るとは思えない。
「君の強さはどこから来ている?」
「私の強さだって? お前程度の人間が聞いてどうするこの世界に生きる人間よ。得たものが多いお前と失ったものが多い私。理由など、目に見えて分かっているだろう?」
無言だった。
言葉を無くしてしまった。
目の前にいる少年は本当に、自分と同じ年齢なのだろうかという疑問に駆られてしまう。
まだ、失う程に得ている年齢でもないのに。
「俺は二度と得た物を失わない。これ以上、なくしてたまるものか。それだけの力があって、亡くすのはもう嫌なんだよ」
その為なら、それだけの為になら。
「すべてを破壊する」
それが答えだった。
破壊しか出来ないなら、そうすれば良い。
護る為に破壊すれば。
「それで、答えが出ただろ? まー精々悩みな、少年。人生は長いんだ。てめーの護りたいものくらいは、見つかるもんだぜ?」
それだけ言いに来たんだよ、と。
リオンはそのまままるで消え入るかのように、退室した。
本当に演出に拘る奴である、とファイならそんなことも言ったのだろうが、生憎と今ここにそんなことを気にする人間などいない。
「失わない為に、か」
答えは見つかった。
彼のお陰で自分は見つけた。
それが正解なのかも分からない。
でも信じるべきものは見つける事は出来た気がする。
やっぱり……
「一人は淋しいしな」
皆と、また、掴みたい。
きっと次こそは。
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