彼の哀歌

5/28

7442人が本棚に入れています
本棚に追加
/617ページ
「わーお」口笛でも吹きそうな顔でリオンはいう。 心底うれしそうだ。 「幻影ですか」 「そうね。でも、これ一体一体が魔力による実体をもっているようなものだし」 「なんですそれ! 聞いてませんよ!」 「いや、俺しか出来ないなんて誰も言ってないし」 のんきな会話を繰り広げながら、周囲に増え続ける幻影の動きを観察する。 「実態のある幻影、って言いましたよね?」 「ああ」 「どの程度まで攻撃が可能なのですか?」 「術者の腕次第だ。確かめるほかない」 「……ってことは全部できるということなのですね」 「まー、一度に自律操作できる数は限られているし、数で大方の検討をつける事は出来るけどな」 それを聞いて周囲にある幻影の数を確認する。 人間の脳というのは、十以上の数を『沢山』としか認識できないらしいが。 少なくとも二十は確認できる。 「十分多い気もしますが」 「こんなもんだろ? 幻影なんてコツがあればすぐにばれるし」 「十倍の戦力差ですか」 「自立型機動兵器とでも考えればいいよ」 普通なら怖気づくところなのだが、生憎と多人数戦というのは慣れているので大した脅威でもない。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加