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これだけの人数を相手にするとなると、さすがに骨が折れる。
このあとにはこれと同等以上の相手が待っているのだから。
「さて、モノホンをどちらが先に仕留められるか勝負してみるか?」
「おちゃらけてる場合ですか。行きますよ」
そういうと、ファイは真っ先に刀を構えて走り出す。
「あー、まいっか。こいつは状況に不利だなー」
遅い来る分身の攻撃をすいすいと回避しながら、レイピアを片手にそうつぶやくリオン。
先ほどの試合よりも、さらに危機感のない表情だ。
「ねーねー。君ってさ。実はここにいないんでしょ?」
終始無言でこちらに攻撃を仕掛けてくる相手生徒に向かってリオンは語りかける。
向かい来る幻影を一体かき消しておく。
「無言ということは答えられないという事、もしくは大当たりであるという事だ」
それを知ってどうする、という回答が返ってきた気がした。
大当たりだった。そこに本人などいない。
簡単なトリック。数人分の魔力を含ませた分身をそこに配置する。
そしてそれの魔力を使用してさらに分身を使用する。
尤も、それはリオンが行う魔法陣を内包したタイプの幻影増加型魔法なのだけれど。
今回相手の生徒が使ったのは、あらかじめ幻影を大量に作り出しておいて、それを重ねて一人に見せかけておき、後でそれをまた複数人に分裂させただけである。
物理的な存在をもたないからこそに簡単な手品だった。
「まー俺たちもそこまで暇じゃなくてねー。だからさっさと」
その手に取り出したカードはスペードスート、十番目のカード。
それに封じ込められている武器は見る者を驚かせる代物だった。
Jよりも下級に当たる代物のはずだというのに、そのインパクトはそれよりも大きかった。
彼の周囲を滞空する無数のナイフ群。
それはまるで自分の意思を持つかのように動き回っている。
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