彼の哀歌

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「……目標撃退、と」 そう呟いたのはリオンだった。 どっと全身から力が抜けるファイ。さすがにあの魔法を受けて、まともに立っていることができるとするなら、それはリオンくらいだろう。 炎剣レーヴァテイン。 リオンが使う魔法の中でも特に火力の強い魔法になる。 尤もそれだけの技術を要する技なのだが、魔力の消費も激しい。 本来近接武器でありながら、その射程は無限といってもいい。 「まったく、自分の持っている最大の火力で相手を仕留めるなんて、ふざけたことはもう二度とやりたくないですね」 なんて刀の火の粉を振り払い、鞘におさめながらリオンに言うファイ。 リオンは遊ぶ気でしかない。 となればとどめは自分で刺すしかなくなる。 とはいってもさすがに五十メートル近くもある距離を一瞬で詰めて、致命傷を与えるなんてことは不可能だ。 だからこそ、リオンの使ったこの技を使う事が最速の行動だと判断したのだ。 ちなみに、今回ファイが使用したレーヴァテインの威力は、リオンの十分の一にも満たない程度の威力でしかないのだから。 「さて、本丸はどう来ると思う?」 「こちらに消耗戦を仕掛けてきたんです。だったら、すぐに攻めてくるはず」 こういった戦闘の際には、動かないことも重要だ。 「へぇ、あせって逃げるかと思えば中々度胸があるじゃないか。下等生物の分際で」 「そりゃあどうも」 振り向きながら、そういうリオン。 「ちなみに、質問しますが」 気を張り詰めたまま、敵の御大将殿に向けて尋ねる。 「どうして不意を突かなかったのでしょうか?」 傲慢に生徒は答える。
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