彼の哀歌

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冗談だろォ! なんて叫びながらリオン達は崩れていく床を蹴りながら何とか上方へと進もうと試みる。 尤も、そこからはさらに魔法の追撃もある為、結果的に下に落ちるという選択肢以外はないわけであるのだが。 落下の際の衝撃を最小限に抑えながら、頭上から降り注ぐ瓦礫と攻撃魔法に対してリオンはナイフで迎撃、回避する。 ファイは鞘による魔法防御という選択肢しかないが。 「ったく! なんだってこんな無茶!」 喚き散らしながらファイは落ちてきた穴を眺める。 「トゥール・コリュプ・デジール。事前の情報通りのやつだねー。ま、あちらさんとしては思っていた通りに事が進んでいないとご立腹だろうがね」 「悠長に事を構えてていいのかい?」 襲ってくる頭上からの炎。 どうやらトゥールも、ファイと同じ火の魔法を使うらしい。 ええい面倒くさい! なんて叫びながら二人は散開してそれを回避する。 「……貴方の目的は理解できていますよ」 「成程、読まれているわけだ」 目の前に現れた生徒を見てそういうリオン。 先程の攻撃の主な目的はリオンとファイの分断。 コンビネーションを取られては厄介だとでも判断したんだろう。 それすらも悪手の一つに過ぎないのだが。 刀を鞘におさめたまま、相手との距離をとる。先程のように罠を仕掛けられていては、たまったものじゃない。 どうせならこちらから罠を仕掛けてやろう、ファイはそう考えながら相手の出方を見る。 武装はオードソックスな剣。しかし、普通のそれと比べると幾分か長大か。 両手剣といったところか。 だとするのなら戦術的有利はファイのほうにある。 担任と比べた時よりはまだましだ。
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