彼の哀歌

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当然ではあるが、武器同士の接触は避けなければならない。 この連戦で尤も危惧しなくてはならないのが、武器の消耗だから。 「先輩。鼻っ柱の高い人間って結局負けるんですよ?」 「どこの世界の話をしているんだ。現実は、力が強い者だけが生き残る」 そうですね、と。腰だめに構えた刀の鯉口を切る。 じり、と相手との距離を測ると脚力を強化して相手の移動して抜刀。 「なッ……!」 予想外なまでの切り込み速度に上級生は酷く狼狽した。 しかし、それは予想していた以上のことであったがため。 反応できない、という速度ではない以上、回避される。 そして距離をもう一度開いて態勢を立て直す。 あえて深追いをすることはない。先ほどの一撃を回避された以上、他の手を打ってこられるかの性もある。 迂闊に攻めて反撃を食らえば、致命傷では済まない可能性もある。 とはいっても、この好機。せめて近寄らない程度に布陣をしかなくては。 「鬼火」 ボゥ、と火の玉が彼の背後に発生する。 それをかき消すために、僅かにファイから気が逸れた。 「行くぞ、ウルカヌス」 彼の周囲から紅蓮がまき散らされていく。 轟々と燃え盛る炎は彼の鎧を形作っていく。 それはいつぞやの姿かたちとは、さらに異なる。 より動きやすく、洗礼されたデザイン。背には加速用のバーニア。 短時間なら飛行も可能になったぞ! 「なめるな!」 相手生徒は大剣を、あろうことかぶんなげて攻撃を仕掛けてくる。 「また、トンデモ系が相手ですか!」 大剣を使う連中は本当に碌な連中がいない、と。 声高に叫びたい気分だ。 横っ飛びして回避したら、今度は肉弾戦を仕掛けてくる。 徒手格闘戦はワルキの土俵だが、ファイでも不可能ではない。 抜刀術も使えず、ジリ貧だがそれでも魔法を使用することは出来る。 炎による鎧を変形させて、剣を形作り、それを使って相手との距離を開いた。 「火焔猫」
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