彼の哀歌

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「おいおい、そんなものでどうやってこいつを倒すというんだよ」 リオンの取り出した武器を嘲笑う。尤も、リオンもそれだけで終わらせるつもりはないが。 「おいおい、常に一つだけしか使わないなんて、誰も言ってないぜ? ついでに今回はこれも使うんだよ」 続いて取り出したのは、ダイアスートの5だった。 リオンの腕や肩、脚部など部分的に鎧が装備される。 動きを鈍らせないように、しかし最低限の防御ができるように。 「それで、どうしようっていうんだい? 僕の意のままに君を殺そうとする彼女を、殺せるのかい?」 「成程、趣味の悪い。俺は殺す気なんてないね」 「リビングデッドにでもするつもりかい? 僕ならそれも可能だがね」 本当に趣味が悪い、とリオンは吐き捨てた。 彼なら、間違いなく死人だろうとなんだろうと使うだろう。 相手の心の隙間に付け入り、殺す。 死者への冒涜だとか、なんだとかはどうでもいい。 個人的に、気に食わない。 ただそれだけだ。 「私ごと倒していいから、あいつをぶちのめして」 短剣と鉄扇を構えたカレナはそう口を開いた。 体の自由は奪っているくせに、口だけは開かせるようになっているとは。 本当に趣味が悪い。 「おいおい、冗談だろ。お前さんを殺したら、後でファイに死ぬほど殴られるのに」 そっちの方が面倒臭い、とうそぶく。 「それに、お前さんを無力化する手段はこっちにゃあるんだしな」 ぶっちゃけ頑張ればどうにでもなるしな、と気楽にそんなことをつぶやいた。 今、現状で尤も恐れるべきは、カレナを必要以上に負傷させる事。 ブローチを所持していない彼女は、今現在死と隣り合わせの現状だといってもいい。 そしてトゥーレの性格からして、確実にカレナに捨て身の攻撃をさせるだろう。 だったら、その前に操っている人間を倒すのも手だが。
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