彼の哀歌

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杖での戦術は基本的に魔術を扱う上において必要なものである。 当然ではあるが、リオンの使用する杖も元来は、魔法を使用する上での補助となるものだ。 速度と手数が重視されている現代の魔法戦において、長距離系の魔法の精度など度外視される為、こういったアクセサリは廃れていった。 以前にも古風と評したことがあったが、本当に時代遅れの装備だ。 尤も今回リオンが使用するのは不殺のための意味合いが強い。それそのものに殺傷能力は無い、というわけではない。もちろん、思い切り頭を殴れば死ぬだろう。 尤も、加減さえ出来れば、不殺として扱う事も出来る。確認するまでもないが、属性付加の魔法等との相性は良好だ。 アンチマジックに相応しい、防御型の装備といったところだろうか。 その用途も、もう忘れ去られているが。 「俺に人質戦法とは考えたがね。生憎と人を殺さない手段も知っているのさ」 ファイがいたら亀の甲よりも年の功ですね、なんて言いそうな言葉だ。 くるくると手で杖を弄びながら、相対する。 その回転運動が停止したと同時に、杖が伸びる。 リオンの身長よりも短いそれは、それ以上に伸びてカレナの胸元に突き刺さろうとする。 この攻撃に対し、辛うじて反応して弾く事に成功した、カレナだったが、態勢を大きく崩してしまい、反撃ができない状態へと陥ってしまった。 「あっという間だな」 なんて言っている間に、リオンは彼女を追い込んでいった。
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