彼の哀歌

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やはり所詮は操り人形。 そんな少女一人御せないほどに、リオンは貧弱ではない。 向かい来る剣をいなし、飛んでくる魔法を打ち消す。防戦一方のようではあるが、相手の疲弊を誘う戦術スタイル、即ち自らの体力を温存する行動をとっていた。 それに気を大きくしたのか、腹部ががら空きになってしまった。 素早く懐に潜り込み、リオンは杖で腹部を突く。 強い一撃ではない。次に、腕を弾きあげて剣を落とす。 そこまでくれば当然反撃はある。鉄扇での打撃だ。しかし、それを振る前にさらにカレナに接近する。 ふるう前の腕に杖を当て、行動を防ぎ、彼女の首根をつかんだ。 「ちっとがまんしといてくれやす」 どこの言葉とも取れない台詞を残し、リオンはカレナを氷漬けにしてしまった。 と言っても、顔だけは出ているけれど。 「さてさて、これで奇妙なオブジェが完成したわけだが。どうだい? 降参する気になったかい?」 けたけた笑いながらリオンはそんな事を言う。 「まったく、本当に驚かされるよ。ここまでも、奥の手を使う事になるとはね」 「えー、まだなんかあんの? チョー楽しみなんだけど」 気のない返答をしながらくるくると杖を弄ぶ。 今の装備でも十二分に相手を圧倒できるという余裕の表れだ 別に今更どんな手品でも驚きはしない。
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