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そもそも、リオン自身の記憶から、完全にキリエの姿が投影さることもおかしいことなのだ。
尤も、そこまで頭が回る人間はこの中に数人といなかったが。
その柄にてをかけ、散らばる火の粉を振り払うように、刀身を抜き放つ。
風切り音一つ。紅蓮を映す、白銀の刃が閃いた。
「なぁ、人間には触れてはならないものがある。それは知っているだろう?」尋ねるリオン。
「あ? ああ、当たり前だ。僕の前じゃあ、意味なんてないけれどね」
「そうだな。それが時に禁断の箱を開けてしまう事にもなりかねないというのに。『好奇心は猫をも殺す』という言葉を知っているだろ? パンドラの箱というのはパンドラという女が開けたものだ」
幾らなんでも背筋がぞくりとする。虚栄を張り続けるけれど、汗が止まらない。足が、震えている気がする。こんなにも暑いのに、冷たい感触。
「お前は今、パンドラって名前の雌猫だよ」
切っ先がトゥーレをとらえた瞬間に、リオンの姿が消え、自らの真横で金属音がした。
「今、なにをしようとしたんですか、貴方は」
「ファイか」
リオンの刃を受け止めたのは同じチームであるファイだった。
「知れた事、この人間の頭で蹴鞠をと思ってな」
「なにさりげなく物騒なことを言っているんですか貴方は。て言うか、貴方は今確実にブローチの効果を打ち消した揚句、やるつもりでしたよね」
「聞こえなかったか? そいつの頭は今から俺の蹴鞠だ」
「ふざけるのもいい加減にしてくれませんか。こんな所で冗談かましていられる程、余裕なのもわかりますが少しは自重をするという事を覚えてくれませんかねぇ?」
「退け」一言だけそういうと、リオンはその腕に力を入れる。
間一髪、ファイはトゥーレを弾き飛ばすことに成功。しかし、自分も吹き飛ばされてしまった。
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