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「痛つつ……リオン様、あなたって人は殺す気ですか」
「当たり前だ」
「冗談は貴方の……」
「黙っていろ、ファイ。今、俺は幾つもの理由で怒り狂っている」
の割には冷静ですね、なんて茶々を入れられる雰囲気ではないのが、よくわかる。
ひしひしと全身からあふれ出るオーラ、とでもいうものだろうか。ただひたすらに殺気だけが、彼の体中から溢れ出している。
ああ、これは拙い、なんて思う。こんなリオンは早々見たことがない。お仕事モードの時でさえも、どこか気だるげで、胡散臭い風貌であることが多いのに。
今のリオンからは全くそんな風は感じられない。全力で、目の前にいる獲物を狩るときの目だ。
近くにはどういう訳か氷漬けになって身動きが取れなくなっているカレナがいる。
少なくとも彼女を救い出し、同時にリオンを止める方法。そんな方法なんて思い浮かばない。
先程の戦闘で消耗している、自分だけでどうにかなる相手ではない。万全の状態ですら、圧倒されてしまうというのに。
だとしても止めるしかない。今のリオンはどう考えても対戦相手を殺す気でいる。生かしておく理由も、なくなったのだから。
「こんな所でむやみやたらにその力を揮ってどうするっていうんですか」
「力なぞ飾りだ。使うべき時に使わなくてはならない。そうでなくては、大切なものなど一つも守れはしない。お前も、覚えていた方がいい」
「それと今回の事、一体どう関係しているというのです」
もう、止める事は不可能。そう判断したファイは刀を納め、腰だめに構える。何時でも、抜刀出来るように。
戦場の片隅にはカレナもいる。彼女の実の安全も同時に確保しなくてはならない。なんという状況だろうか。これでは守るものも、守れない。
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